労働基準監督署など対応

労働基準監督署の調査の種類
労働基準監督署は、労働基準法の違反の有無を調査する目的で、会社に立ち入り、実情を調査し、改善すべき点の指導を行います。この調査のことを「臨検監督」と呼びます。臨検監督には、主に、定期監督と申告監督の2種類があります。また、その他に、災害時監督、再監督もあります。

1.定期監督
労働基準監督署が、スケジュールを組んで、定期的・計画的に実施する調査で、最も一般的な調査です。労働基準監督署の計画により、無作為に調査対象の会社を抽出し、調査が行われます。

2.申告監督
従業員からの申告(告発)に基づく調査で、その申告内容を確認することを中心に調査が行われます。監督官により、調査の前後に、申告があったことを教えてくれる場合もあれば、申告があったことを明らかにせず調査をする場合もあります。いずれの場合も、当然のことながら、申告した従業員の氏名などは一切教えてくれません。

3.災害時監督
一定規模以上の労働災害が発生した場合、その原因究明や再発防止の指導を行うための調査です。
4.再監督
監督により是正勧告を受けた場合、その違反項目が是正されたかどうかを確認するため、又は、是正勧告を受けたにもかかわらず、指定期日までに是正報告書を提出しない場合になどに、再度行われる調査です。
労働基準監督署の調査の予告
労働基準監督署の調査は、原則として、予告なしに、ある日、突然、監督官がやってきます。
一方で、電話連絡で、「調査のため、いついつ訪問させていただきたい。」と、調査日を予告して訪問してくる場合や、FAXで、調査日や準備しておく帳簿や書類を事前に連絡してくるケースも多くあります。
また、「出頭通知書」という書類が届き、会社側が、労働基準監督署へ出頭しなければならない場合もあります。
さて、監督官が、突然、あなたの会社へ調査に来た場合、調査を拒否することができるかどうかというと、原則として拒否することはできません。
しかし、責任者が不在であったり、どうしても急な対応が困難である場合は、監督官に対し、丁重に日程の変更をお願いすれば、応じてもらえる場合があります。

労働基準監督署の定期監督に選ばれやすい会社はあるのでしょうか?
実際のところ、やはり調査対象として選ばれやすい会社はあります。
一般的に、よくターゲットとされるのは、次のような会社だと言われています。

調査対象に選ばれやすい会社
○ 就業規則の届出をしていない会社
○ 36協定の届出をしていない会社
○ 36協定の届出はしているが、協定する時間外労働の時間が長い会社
○ みなし労働時間制(裁量労働制)を採用している会社
○ 内部からの申告(告発)が頻繁にある会社
○ 労災事故がよく起こる会社
○ 一般的に、「サービス残業が多い」と思われている業種の会社
(飲食業、運送業、広告業、卸売業、ITソフトウェア業など)

労働基準監督署の調査で要求される帳簿・書類
労働基準監督署の調査の際、要求される帳簿・書類は、以下のとおりです。

個々の調査により、要求される帳簿・書類は異なりますが、以下の一覧表の書類は、概ね共通して求められる書類です。調査の過程で、他の追加書類の提出を求められる場合もあります。

また、予告ありの調査の場合には、労働基準監督署から、事前に、準備しておく帳簿・書類を連絡してくれることもあります。

1.会社の組織図
2.労働者名簿
3.賃金台帳
4.就業規則
5.従業員別の時間外労働・休日労働の実績資料
6.タイムカード等の勤務時間の確認できる資料
7.時間外労働・休日労働に関する協定届
8.変形労働時間制などの定めをしている場合の労使協定
9.変形労働時間制のシフト表
10.従業員の年次有給休暇の取得状況に関する管理簿
11.従業員に交付した労働条件通知書(雇用契約書)
12.健康診断の実施結果(健康診断個人票)
13.安全管理者、衛生管理者の選任状況
14.安全委員会、衛生委員会の設置・運営状況についての資料
15.産業医の選任状況についての資料
労働基準監督署の調査の内容
労働基準監督署により調査される内容は、調査により異なりますが、一般的に主な調査項目は以下のような内容になります。

1. 労働条件
○ 労働条件通知書(雇入れ通知書)
○ 就業規則
○ 就業規則の届出
○ 就業規則の周知

2. 労働時間
○ タイムカード等の労働時間の記録
○ 36協定の締結・届出
〇 時間外・休日労働の把握状況
○ 変形労働時間制の労使協定の締結・届出

3. 賃金
○ 賃金台帳
○ 残業代の支払い状況
○ 残業代の計算方法
○ 最低賃金

4. 年次有給休暇
○ 年次有給休暇の取得状況
○ 年次有給休暇の取得記録

5. 安全衛生管理
○ 安全衛生推進者等の選任状況
○ 産業医の選任状況
○ 安全衛生委員会等の設置状況

6. 健康管理
○ 健康診断の実施記録
○ 健康診断結果報告
○ 過重労働の有無
違反に対する是正勧告・指導
労働基準監督署の調査の結果、労働基準法などの法律違反や要改善点が見つかった場合は、是正勧告及び指導が行われることになります。

法令違反の項目については、その違反項目と是正期日が書かれた是正勧告書が交付され、法令違反ではないが、改善が必要と判断された項目については、指導票が交付されることとなります。
労働基準監督署の調査で絶対にしてはいけないこと
労働基準法では、監督官の調査を拒んだり、妨げたり、尋問に答えなかったり、虚偽の陳述をしたり、帳簿を提出しなかったり、虚偽の帳簿書類を提出した場合は、30万円以下の罰金に処すると規定されています。

調査に対しては協力的な姿勢で臨み、次のような行動は絶対に行わないでください。

調査で絶対にしてはいけないこと

○ 調査を妨害する、又は、非協力的な態度をとる
○ 帳簿・書類のデータを改ざんする(虚偽の記載をする)
○ 帳簿・書類等を隠す
○ 虚偽の発言をする
○ 従業員に対して、虚偽の発言をするように強要する
労働基準監督署の調査対応は社会保険労務士に相談を!
働基準監督署の調査に当たっては、専門家である社会保険労務士に相談することをオススメします。

社会保険労務士に頼むと・・・
・ 労働基準監督署の調査が入ることが事前に分かっている場合
→ 社会保険労務士から調査に立ち会ってもらえるため、安心して調査に臨むことができます。

・ 労働基準監督署から是正勧告・指導を受けた場合
→ より良い是正方法を支援してもらえます。

労働基準監督署から、是正勧告を受けた場合、ほとんどの会社は、その正しい是正方法が分からないことが多いと思います。
是正勧告に応じることは、場合により、金銭的損失を生じることもあり、会社の経営に関わる大きな問題となる場合もあります。
不慣れなことを自分でやり、大きな損失を招くより、専門家に相談して、正しい方法で、しかも会社にとって一番有利な方法(一番損失の少ない方法)で、是正を支援してもらうことをオススメします。
増加傾向にある内部からの告発
近年、労働基準監督署への申告(内部告発)件数は増加傾向にあります。

また、近年の申告の特徴は、従業員本人からだけではなく、その家族からの申告が増えてきていると言われています。
例えば、「ご主人が、長時間労働で毎日遅くまで残業しているのに、給与明細書を見てみたら、残業手当がほとんど支払われていない。」なんてことになれば、奥さんが労働基準監督署に申告することも十分に考えられます。
申告があると、労働基準監督署は調査(申告監督)に乗り出 すことになりますが、申告があれば必ず労働基準監督署が調査をしなければならないという法的義務は無く、申告があっても、調査に入られる会社もあれば、調査に入られない会社もあります。
また、匿名で行われた申告は、正式な申告としては受理してもらえず、一種の「情報提供」として取り扱われます。
ただし、たとえ「情報提供」であったとしても、頻繁に「情報提供」があるなど、労働基準監督署が必要と判断したときには、調査に乗り出す場合もあります。